動的歩行の獲得

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こんにちは!

前回の記事では、

『静的歩行』と『動的歩行』

について簡単にご紹介させて頂きました!

今回は、実際に静的な歩行から動的歩行を獲得された利用者様の紹介をさせて頂こうかと思います!

前回の記事をお読みでない方は、

まずはこちらをチェックしてみてください(^^)/

 

 

 

 

●ご利用者様の紹介:

40歳代男性 2019年に右脳出血を発症.

回復期病院退院後は自宅内は杖で何とか歩けていましたが、外出時は車いすを使用し、奥様に押してもらっていました。

             

●初めて来所されたとき:

立ち上がり動作は立位保持の段階で、すでに恐怖心がみられていました。

フリーハンド歩行は手添え介助が必要な状態で、

重心移動が少ない・歩隔(足と足の間隔)が狭い・歩幅が小さい・歩行速度が遅い

と、まさに静的な歩行を呈していました。

そのため、凹凸や段差の多く人や車の行き交いなどの予測できない外乱が加わる屋外の環境下では、

転倒リスクが非常に高い歩き方となっていました。

 

●まず行ったこと:

お会いした当初のY様の運動の特徴として、非麻痺側である右半身の力を優位に使い、かつゆっくりとした寝返りや立ち上がりを行っていました。

歩く時も、1歩1歩ゆっくり慎重に、体重移動をしっかり意識しながら、といった動きになっていました。

 

これらのことから、静的な運動を学習してしまった1番の原因は

加速度を制限した動作の学習にあると考えました。

 

前回の記事でお伝えした通り、動的歩行の再獲得には慣性力が必須であり、

慣性力には加速度が必要になります。

また、少し専門的な内容になるので詳細な説明は割愛しますが、

この加速度という外力情報を受け取って運動に出力してくれている神経経路の中で、

前庭脊髄路という経路が存在します。

この前庭脊髄路は、大脳を経由せずに直接脊髄に運動指令を出してくれるが特徴です。

 

つまり、

脳出血により障害を受けている大脳を経由しなくても、

運動を生成してくれるのです。

 

 

これらの脳科学的背景から、Y様に対してガンガン慣性力を利用した運動を促していきました!

とにかく、前後・左右・上下に素早く動き、そしてピタッと止め、すぐに次の運動に繋ぐ。

そんな運動の感覚を、寝た状態・座った状態・立った状態で身体に入力していきました。

 

 

●その約1か月後!

1か月前に比べて歩隔が広がり、歩幅は大きく、歩行速度が速くなりました!

安定性も大きく改善しており、手添え介助は不要になっています。

動画の最初の方の椅子からの立ち上がりも動作が滑らかになっており、杖を使わずに立ち上がれていますね。

 

 

●開始時と卒業時を比べると・・・

特に説明はいらないですよね(^^)

めちゃくちゃ速いです!!

速度でいうと、約2.8㎞/時速くなってます! Y様すごい!!

動的な歩行で、感動的です!!

 

 

いかがでしたでしょうか?

 

最後のだじゃれが、という意味ではありません。

静的歩行から動的歩行への移り変わりの様子は、という意味です。笑

 

Y様は車いすはとっくに返却され、今は杖を使ってお一人でも外出されています。

買い物もできるようになり、

エスカレーターも、階段も、バスも利用できます。

しかも、まだまだ改善の余地はあります。

 

 

ぜひ、皆様にも諦めずに、動的歩行・動的な運動の獲得を目指して欲しいと思います!!!

 

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